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テキスト-光り物「アナタは今後,光り物に近付かない方がよいでしょう。」 「新しく買うのもダメなんでしょうか?」 Aさんが聞き返すと,占い師はうなずき,こう答えた。 「もし近付けば,アナタは大変な恥をかくことになるでしょう。」 占い師が自信満々の態度で言うので,Aさんは金や銀を店で見かけても見なかったことにした。光り物付きのAさんにとってこれは大変な我慢である。 会社から帰る電車の中は,いつものように満員だった。もちろん席など無く,身動きするすき間もない。つかむつり革もなかったAさんは自分の境遇を思い,ため息をついた。 その時だ。電車が急にスピードを落とした。つり革を握っていないAさんは,とっさに脇で座っていた中年の男の人の頭を掴んでしまった。よく見ると,その頭は禿げている。 男は顔を上げ,Aさんの方を見た。目が合ってしまった。しかし,満員のため顔をそらすことができない。周りの人からじろじろ見られ,Aさんの「光り物」による恥は電車を降りるまで続いた。 |